全国的にも珍しい「史跡料亭」である『花月』さんへ行ってきました。
数多くの著名人が訪れた歴史ある場所でいただく、長崎文化を感じる伝統の卓袱料理(和華蘭料理)!
写真とともに紹介します。
史跡料亭『花月』
寛永19年(1642年)創業。
『史跡料亭 花月』は、かつて長崎にあった丸山遊郭の老舗『引田屋花月楼』がはじまりです。
当時の『引田屋花月楼』は、丸山遊郭随一の規模で、遊女は高い教養と芸事も身に付けており、一流ランクの太夫を抱えていたのだそうです。
幕末になると勝海舟や坂本龍馬、岩崎彌太郎(三菱財閥を築き上げた実業家)など要人が訪れ、
明治の激動の時代に活躍した国際人の社交場となっていたそうです。
この場所、この料亭で、日本に未来が熱く語られてきたとのことで、史跡としての価値が高い料亭です。
また、2025年にヒットした映画『国宝』でモデルとなった料亭なのだそうです。
料亭は、JR長崎駅から路面電車で13分の場所にあります。
電話で予約をして伺いました。
卓袱料理のコース料金は3種類、。昼と夜で異なります。席の時間は、2時間ほどでした。
卓袱料理
23,760円(税サ込)(お一人様)
26,400円(税サ込)(お一人様)
33,000円(税サ込)(お一人様)料理長おすすめコース(昼食サービスコース)※繁忙期料金変動あり
10,560円(税サ込)(お一人様)
14,520円(税サ込)(お一人様)
17,160円(税サ込)(お一人様)
品数は13品で、コースにより品数は変わらないとのことです。変わるのは、食材やお造りのグレードが変わるのだそう。
後半で紹介する花月の名物料理である南蛮料理『パスティ』がいただけるのは、卓袱料理のフルコースのみです。
訪問当日の雰囲気
外観はこちら。周りは、マンションが建ち並ぶ住宅街。

本当にこんなところに料亭があるの…?

道に迷ってしまったかな
と不安になりながら、向かっていましたが、突然ご覧のような雰囲気ある日本家屋が現れてびっくり。かつて遊郭があったというのも納得の雰囲気です。
女将さんいわく

神社かお寺と間違えて覗いたりされる観光客の方が多いんですよ
とのこと。
女将さんに、個室へと案内されます。
本日の予約は満席とのこと。土日祝日に伺う方は、事前に余裕を持って予約することをおすすめします。
当日案内していただいたのは、『山陽の間』と呼ばれる個室です。
『花月』公式サイトより<https://www.ryoutei-kagetsu.co.jp/room/>
詩人・頼山陽が愛した 心地いい個室
頼山陽が3ヶ月間滞在して遊学利用していた「山陽の間」は、庭園を望む個室になっております。少人数での宴会や、静かに仕事をしながらお過ごしいただけるテレワークでもご利用いただけます。
夜の庭園はライトアップされており、部屋から庭園が見えるようになっていました。
頼山陽(らいさんよう)は、江戸時代後期の儒学者、歴史家、詩人。
歴史書『日本外史』の著者として知られています。
花月の2階にある資料館には、頼山陽の作品が保管・展示されていました。記事の後半で紹介します。
個室には丸いテーブルが一つ。椅子が人数分。
入口で靴を脱いであがりますので、靴下持参が必要(裸足NG)です。
卓袱料理 26,400円/人コース
卓袱(しっぽく)料理とは、
かつて長崎だけが中国やオランダなどと交易を交わし、さまざまな人と文化が上陸してきた時代がありました。とくに食文化は影響が大きく、いろんな国の料理が味わえる長崎グルメは、別名「和華蘭(わからん)グルメ」と呼ばれています。
和は日本料理、華は中国料理、蘭はオランダやポルトガルなどの西洋料理を指します。それらの料理が一堂に会するのが「卓袱料理」です。
花月』公式サイトより<https://www.ryoutei-kagetsu.co.jp/room/>
いろんな国の文化が混ざって「わからん」にかかっているのですね。
江戸初期、長崎で暮らしていた中国人(唐人)が、客人を招いてもてなした料理がルーツとされ、卓袱の「卓」はテーブル、「袱」はテーブルクロスを意味しております。
中国人はひとつの大きな丸いテーブルに料理を並べ、身分の分け隔てなく円卓を囲み、和気あいあいと食事を楽しんでおりました。
伝統通り、大きな丸いテーブルが一つありました。
卓袱料理の正式マナーとしては、『取り皿は2枚』使用するのだそうです。
これは、昔は家庭でお客様をもてなしていたため、給仕の手間がかからぬようにとの心配りからきた作法です。
飲み物を注文。しかし、その前に出していただいたのは、こちらのお吸い物。
卓袱料理のマナーとしては、『始まりはこちらのお吸い物をいただいてから』なのだそう。
御鰭(おひれ)
始まりは「御鰭をどうぞ」から
卓袱料理は女将の「御鰭(おひれ)をどうぞ」の言葉から始まります。御鰭とは、「お客様お一人様に対して鯛一尾を使っておもてなし致します」という心意気を伝える吸い物のことで、以前は鯛の胸鰭が入っておりました。
乾杯や主催者の挨拶も、この御鰭をいただいてから始められますが、お酒をいただく前に胃をいたわる心配りも込められています。
御鰭さえ済ませれば、食べ方などの決まりはなく、円卓に並んだ料理を好きなように味わうのが、卓袱料理の楽しみ方です。
御鰭(おひれ)をいただいてからは、次々とお料理が運ばれてきます。
続いて、
お造り
豪華に、伊勢海老のお造りです!
今回は真ん中の26,400円のコースにしました。一番安い23,760円のコースには、伊勢海老はついていないのだそうです。
こちらのお造りは、女将さんが丁寧に、個別のお皿に取り分けてくださいました。
ぷりぷりの伊勢海老はもちろん美味しいのですが、それ以上に長崎でとれたムラサキウニが絶品です!!
ミョウバン風味や苦味は全くなく、甘くて香り高いです。
贅沢に伊勢海老とウニを一緒にいただきました。

ウニが美味しすぎる!

プリンに醤油、と表現する人の気持ちがわかる
鯨の湯引き
クジラの部位は、さえずり、ベーコン、すえひろ。
長芋と豆腐。
三品盛
車海老の黄身寿司、穴子の煮凝り、黄身の醤油漬け、卵焼きなど。
卵焼きは甘みが強く、ほろほろとクリーミーです。クリームチーズが入っているようなコクとねっとり感。一般的な卵焼きというより、濃厚なチーズケーキに近い食感です。
変り鉢
パイ生地を使った「パスティ」。こちらは南蛮料理のひとつだそうで、世界の料理が融合した
「おもてなし料理」こと卓袱料理ならではです。
崩して、中の具と一緒にいただくとのこと。
大鉢
ズワイガニの天ぷらの、あんかけ。
中鉢
角煮です。中華料理からきており、世界の料理が融合したおもてなし料理」こと卓袱料理ならではです。
しっとり柔らかく、甘い味付けです。脂はトロトロ。
長崎旅行中に食べた角煮の中でも、トップクラスのおいしさです。
御飯、煮物、香の物
きのこがたっぷり入ったスープは、ぜひご飯にかけて召し上がりくださいとのこと。
水菓子
下にはヨーグルトムース。マスカットやイチジクなど、秋らしいフルーツがのっています。
梅椀
最後におしるこです。白玉団子と芥子の実。
卓袱料理は、『御鰭』であるお吸い物から始まり、『梅椀』であるお汁粉で終わるのだそうです。
詩人・頼山陽がヶ月間滞在して遊学利用していた「山陽の間」。
歴史ある場所・お部屋で、伝統あるお料理をいただき、素敵な体験をさせていただきました!
歴史に触れることができる貴重な『資料展示』
創業380年の史跡料亭には、貴重な資料を展示した「集古館」があるとのこと。
まさしく、長崎の歴史を知る収蔵庫。
一般公開はされておらず、こちらを見学させてもらえるのは、花月でお料理をいただいたお客様のみ!
ぜひ、見学させていただくことをおすすめします!
坂本龍馬がつけた刀傷「竜の間」
国賓の晩餐会や結婚式の披露宴にも使われる「竜の間」と呼ばれる大広間。
こちらに、坂本龍馬がつけた刀傷があるとのことです。
けっこうしっかりと残っています!
それに1つだけでなくいくつか(左側に4つ?、右に1つ)。
そして、こちらの広間は2階にありながら、立派な庭園が綺麗に望めます。
この庭園の景色を、坂本龍馬も好んで眺めていたのだそうです。
お部屋から望む美しい庭園は元禄庭園を模した作庭と言われており、現在も当時の面影を残し、お客様をお迎えいたしております。
緑豊かな庭園は「丸山」という地名通り高低差を活かし、各部屋からご覧いただける造りになっております。
季節を伝えるお庭と、歴史を感じるお部屋で、当時に思いを馳せながら特別な時間をお過ごしください。
花月』公式サイトより<https://www.ryoutei-kagetsu.co.jp/room/>
披露宴や、芸子さんの舞の出し物など、様々な用途で使用される広間だそうです。
曇っているガラスは、今では製造されていない貴重なガラスなのだそうです。
坂本龍馬直筆の嘆願書
慶応3年(1867年)に長崎で発生したイカルス号事件。
犯人が海援隊士と疑われ、その際に、坂本龍馬が長崎奉行所に対して抗議するための書いた嘆願書の下書きとのことです。
大河ドラマ『龍馬伝』で坂本龍馬を演じた福山雅治さんのサイン
2010年、大河ドラマ『龍馬伝』で、坂本龍馬を演じた福山雅治さんは、長崎出身。
その福山雅治さんのサインが展示されていました。
2010年の紅白歌合戦では、こちらの史跡料亭『花月』から、福山雅治さんが中継で繋いで出演されたとのことです。
ちなみに、プライベートでも訪れたことのある福山雅治さんにお会いしたという、女将さんいわく

もうすっごいかっこよかった♡
オーラが違うのよ!!
思い出だけで、レディの目をここまでハートにして、幸せにできるなんて、さすが福山雅治さん…!!
日本初の洋間「春雨の間」
日本初の洋間という「春雨の間」。
床はタイル貼りで洋風、格天井は和風、ランプや窓は中華式と、和洋折衷の見事な空間です。まさに、「和華蘭(わからん)グルメ」をいただくのにぴったりなお部屋です。
床はタイル
和風の格天井
中華風の窓
こちらの「春雨の間」は、前回訪問した際に案内していただいたお部屋です。

孫文のモノクロ写真
1911年の辛亥革命を主導し、中華民国(台湾)を建国した革命家である孫文。
その孫文が、長崎に立ち寄った際に花月を訪問しており、その際に撮影されたという写真が飾られていました。

日本史の教科書で見る名前の人が、こうやってモノクロ写真に残っているとは…!
改めて、こちらの史跡料亭『花月』さんの歴史を感じさせられました。
岩崎彌太郎が酔って落ちた池
三菱財閥の創業者である実業家、岩崎彌太郎(岩崎 弥太郎)。
庭園にある池に、その岩崎彌太郎が酔って落ちたことがあるそうで、その出来事を自身の日記に書き残しているそうです。
第三代総理大臣、山縣有朋の書
勝海舟が利用した部屋「月の間」
竜の間の隣には、勝海舟が利用した部屋「月の間」があります。勝海舟直筆の書がかかっているとのこと。
花月』公式サイトより<https://www.ryoutei-kagetsu.co.jp/room/>
頼山陽の作品
その他にも、たくさんの作品や貴重な資料が展示されていました!
展示しているのはごく一部とのことで、倉庫には他にもまだまだ資料が保管されているそうです(;’∀’)
まとめ・注意点
幕末の志士や文人たちも集う社交場、という歴史ある場所で、伝統あるお料理をいただき、素敵な体験をさせていただきました!
歴史を感じられる空間で特別な時間を過ごすことができます。
注意点としては以下の通りです。
- 靴を脱いで座敷へ案内していただくため、裸足とならないよう、サンダルの場合は靴下を持参することをおすすめします
- 名物料理である南蛮料理『パスティ』がいただけるのは、フルコース卓袱料理のみ
- 完全予約制(大人2名より)。前日までに電話で予約。
長崎旅行の際は、ぜひ史跡料亭『花月』さんへ!