200年以上の歴史を持つ、正真正銘のロンドン・ジン「ビーフィーター・ジン(Beefeater Gin)」
赤い制服を身にまとったロンドン塔の衛兵隊が描かれてることで有名ですね。
ロンドンの蒸留所の工場見学ツアーに参加してきました!写真と共に紹介します。
ビーフィーター・ジン(Beefeater Gin)って?
ロンドン・ドライ・ジンである『ビーフィーター・ジン(Beefeater Gin)』。
日本のスーパー・コンビニでもよく見かける有名なジンですね。1820年の創業以来、同じレシピで作り続けられています。
200年以上の歴史を持つ、正真正銘のロンドン・ジンを作り続けている大手蒸留所です。
ラベルに描かれているのは赤い制服の人は、ヨーマン・ウォーダー(通称ビーフィーター)と呼ばれる、ロンドン塔の衛兵隊です。この役職に就くには、なんと最低22年もの軍歴が必要。
『ビーフィーター(牛食い)』と呼ばれるようになった由来は諸説あり、一説には「昔ビーフィーター達の給料としてお金だけでなく牛肉(当時は高級品)が含まれていたから」という説もあるようです。
商品名を”ビーフィーター”にしたのは創立者です。「芳醇で力強い風味を持つジン」という理由から、屈強な”ビーフィーター”の名を取り入れたのだそうです。
見学ツアー
ビーフィータージンの蒸留所見学ツアー(Beefeater Gin Distillery Tour)に参加してきました!
蒸留所の最寄りの地下鉄駅は、ケニントン(Kennington)やヴォクソール (Vauxhall)、オーバル(Oval)など。どの駅からも10分ちょっとほど歩いた場所にあります。
工場見学ツアー「Beefeater Gin Distillery Tour」の料金は、1人25ポンド。所用時間は、1時間半です。
ツアー内容は、ビーフィーターの歴史が学べる展示スペースから始まり、4種類のロンドン・ドライ・ジンのテイスティング、蒸留器の見学などが含まれています。
蒸留所見学ツアーはこの他に4種類ほどあり、一番豪華で料金が高いVIPツアー「BEEFEATER CROWN JEWEL TOUR」は、1人120ポンド!(;’∀’)
ツアー内容の正確な情報は、ビーフィーター公式サイトをご確認ください。<https://www.beefeaterdistillery.com/>
ジンの歴史を学べる展示エリア
ツアーはこちらのショップ横にある扉からスタートです。
ジンの誕生はイギリスではなくオランダ。オランダの医学者が蒸留酒にジュニパー・ベリーを漬け込んで開発した薬酒「ジェネヴァGenever」から始まっています。
17世紀のイギリスでは、フランスからのブランデーの輸入が禁止され、地元で穀物を使った蒸留酒の製造が奨励されます。その結果、数多くの蒸留所ができ、蒸留酒が無秩序に流通するようになりました。
当時、ジン製造にはライセンスやルールが存在しなかったため、質の悪いジンが多く流通しました。その結果、ロンドンの街の治安は乱れ、公衆の面前での酩酊、賭博や売春が横行し、「’city of sin’(罪の街)」と呼ばれるように。
そんな時代に、英国の芸術家ウィリアム・ホガース(William Hogarth)によって描かれた作品が、こちらの『ジン横丁(Gin Lane)』と『ビール通り(Beer Street)』です。
一般階級に広がるジンによる社会問題を描いた作品です。
『ジン横丁(Gin Lane)』
当時、ジンは安く飲めるお酒だったため、特に貧困層に人気がありました。しかし、ジン製造に免許・規制が無かったため、質が悪いジンも多く流通しており、体を壊す人が続出。
絵には、首を吊る人、売春婦の赤ちゃんが階段から落ちていく様子、ジンを飲む少女、赤ちゃんにジンを飲ませる母親、質屋に家財を売ってまでジンの飲み代にしたい人など、社会問題となるアルコール中毒者の惨状が描かれています。
『ビール通り(Beer Street)』
ジン横丁に対してこちらのビール通りは、みな生き生きと生活している様子です。
怠惰な生活が描かれたジン横丁とは違い、市民が真面目に労働し、その対価で得たお金で英国産ビールを楽しむ様子が描かれています。
ジンは「不健康・不道徳なお酒」であり、ビールは「健康的・労働者のためのお酒」というイメージを表現しています。
当時のビールには重税がかけられていたため、安価なジンが貧困層にで人気になるのもわかりますが…(*_*)
そんな状況を見かねて、1737年にジンの闇市場を密告した人に報酬を与える法律が制定されました。
しかし、これで密造酒ジンの売買が無くなることはなく、売人はあの手この手で方法で売買するようになります(;’∀’)
そのジンの密売に使われたのが、こちらの黒猫の像です。全然可愛くない黒猫、この猫には仕掛けがあります。
客がこの黒猫の前で「2ペンス分のジンをおくれ!」と言い、猫の口にコインを入れると、招き猫のようになっている手についている蛇口から、ジンが出てくる仕組みになっています。
これほどまでに悪いイメージがあったジンですが、産業革命により社会構造が大きく変化するに際し、ジンを取り巻く状況も変わっていきます。
当時、大英帝国の成長期。ロンドンのコヴェントガーデン付近の市場には、世界中から輸入された品々が並んでいました。
世界各国の産物がイギリスに集結し、ジンの品質向上に繋がりました。
ビーフィーターの創業者は、この時代のチャンスをつかんだ成功者の1人なのでしょうね。
銅製の蒸留器。
ステンレス製とは違い、銅製の蒸留器は、スピリッツ・植物から硫黄などの好ましくない風味を取り除き、ロンドン・ドライ・ジンの特徴である芳香と風味のあるジンを作り出すのに適しているそうです。
コフィ式連続蒸溜器の発明も、ジンの品質向上に繋がりました。
「粗悪品」というイメージが強かったジンですが、熱心な酒造家によりジンの質が改善され、19世紀はジンのイメージアップ&復興が進んでいきます。
かくして、ビーフィーターも高品質・人気のジンに。
そしてカクテル文化が到来します。
ジンを使ったカクテルが紹介されています。
ビーフィーターをベースにしたカクテルは100種類ほどもあるそう。さすが、カクテルベースの王様ですね(;’∀’)
ジントニックの誕生のきっかけは、マラリア予防だそうです。
英国の植民地インドでは、マラリアが蔓延しており、その薬として使われていたのがキネの樹皮。その樹皮を砂糖水につけたのがトニックウォーターとなり、それにジンを加えてジントニックが生まれました。
テイスティング
4種のジンのテイスティング。使用されている原料(ボタニカル)から詳しく説明してもらえます。
中央の真っ黒な実が、ジンの風味のベースとなっているジュニパーベリー(杜松果)です。潰してみるとたしかにジンの香りがします!
テイスティングした4種は、写真上段の4つです。
スタンダードな「ビーフィーター」、ロンドンの庭園にインスパイアされて作られた「BEEFEATER LONDON GARDEN」、
茶葉を使用した「ビーフィーター24」、週末にボタニカルを浸漬させ月曜日に蒸留した風味が強い「MONDAY’S GIN」。
テイスティングエリアの隣にはバーがありました。メニューはこちら。
ツアー終了後、こちらにまた戻ってきてゆっくりと飲むことができます。
蒸留器
実際に使用している蒸留器も見学させてもらえます。
厳選されたボタニカルを加えて24時間浸漬(スティーピング)、7時間かけて蒸留します。ゆっくり、たっぷり時間をかけたスティーピングによって、あの力強いジュニパーベリーの香りが出るのですね。
ショップの様子
蒸留所には、立派なショップも併設されています。
ジンボトルだけでなく、グラス・タオルなどのグッズも。
ボトル1本は大きすぎるな…という方向けに、ミニボトルでも複数種類販売されていました。抜かりないですね。
同じくロンドンにあるジン蒸留所「シティ・オブ・ロンドン(City of London)蒸留所」の見学ツアーにも参加しました。
そちらの見学ツアーでは、席に座って簡単なジンの歴史の紹介とテイスティングだけでしたが、こちらビーフィーターでは博物館のように豪華な展示エリアを楽しめます。
展示は文章で説明されていますので、リスニング力に自信のない方でも自分のペースで見て回ることができるのが良い点かなと思いました。
ここまで読んでいただきありがとうございました。