展示品
フリーパンフレットに記載のある代表20作品、気になるものから、いくつかご紹介します。
The Ardabil Carpet, 1539-40 世界最古最大のカーペット
アルダビル・カーペットは世界最古&最大の年代物カーペットで、歴史的に重要なカーペットの1つです。
イラン北西部のアルダビールの町で作られたもので、イスラム暦の946年(AD1539-1540)ごろに作られたものだとされています。
見事なフィラー模様には、10色が取り入れられており、染料にはザクロの皮や藍などの天然素材が使われているそうです。
このような大きな絨毯を作るには、熟練した織り手のチームが数年がかりで、一度に10人ほどの織り手が関わったと推察されています。
1893年3月、V&A博物館がこの絨毯を2,000ポンドで購入したそうです。
Batel nut container,1780-1885 檳榔子(びんろうじ)容器
長寿を象徴する神話の鳥をかたどった、豪華な装飾が施された檳榔子(びんろうじ)容器。
ビンロウというヤシの実の種子をビンロウジと呼び、その種子は嗜好品として噛みタバコに似た使われ方をされていました。
この容器は、かつてビルマ(現在のミャンマー)最後の君主であったティバウ王の王具の一部でしたが、1885年に英国が王を倒した際、ビルマ王朝の権力を象徴する貴重な礼装を押収し、英国に持ち帰ったものです。
ミャンマーに返還されるまでの1890年から1964年の間は、サウス・ケンジントン博物館に展示されていましたが、
ミャンマー政府が友好と感謝の意を込めて英国に返還し、それ以来こちらのV&A博物館で展示され続けています。
Bast of a Boy,about 1705-10 少年の胸像
こちらの白大理石でできたアフリカの少年の胸像は、ベルギーの港湾都市アントワープ(Antwerp)で彫られたものです。
国際都市であるアントワープでは、歴史的な交易や大西洋横断の奴隷貿易に携わったことから、黒人社会が発展していました。
少年の素性は不明ですが、上着のスタイルから「奴隷の召使い」であった可能性があり、彼が身に着けているメダルの男性は「奴隷の持ち主」を表しているそうです。
束縛的で非人道的な奴隷貿易の歴史を思い起こさせる展示品です。
The Mazarin Chest, 1640年 マザランチェスト
1640年ごろに京都で作られた「日本の輸出漆の最高傑作の一つ」である、マザランチェスト。
ヨーロッパ最大と言われる、V&A博物館の日本コレクションの中でも人気のある展示品です。
元々はマザラン・ラ・メイエレー家が所有しており、フランス製の鉄鍵にはマザラン・ラ・メイエレー家の紋章があしらわれています。数々の収集家の手に渡った後に、1882年にこのV&A博物館が競売で購入。
黒漆塗りの木地に、源氏物語や曽我兄弟の物語を題材とした山水画がふんだんに描かれています。
宮廷生活をめぐる源氏物語は、54帖から構成されています。チェストの正面には各場面が描かれています。
下部左端には、第28帖「野分」から、女御たちが花を摘む場面が描かれています。
下部右端には、第15帖「蓬生」から、光源氏が、侍従と、傘をかざす腹心の家来である惟光に付き添われて、長い間忘れていた恋人の末摘花を訪れる場面が描かれています。
Tippoo’s Tiger, 1793年 ティプーの虎
1782年から1799年まで南インドのマイソールの支配者だったティプー・スルタンのために作られたものです。
木製の半自動人形であるこの虎が、同じく木製の仰向けになったヨーロッパ人兵士に襲いかかっています。
虎についているハンドルを回すことで、兵士の腕が上下すると同時に、死に際のうめき声のような音が出るのだそうです(;’∀’)
虎や虎の縞模様は、ティプ・スルタンの所有物に施されており、彼の支配や個人的な関連を示す装飾でした。玉座には宝石をちりばめた金の虎の頭の飾り、硬貨には虎の縞模様が刻印され、剣や銃にはその形や装飾に虎の頭や縞模様が取り入れられています。
ティプ・スルタンは、イギリス東インド会社の軍隊が自分の王国を攻撃するのに強く抵抗していました。イギリス東インド会社は貿易を目的に設立されましたが、18世紀後半にはイギリスのインド支配を拡大するようになっていました。
そのイギリスに対する対抗心を表した美術品でしょうか。