旧王立海軍学校(Old Royal Naval College)の一部である、「ペインテッドホール(Painted Hall)」
19年もの歳月をかけて描かれた壁・天井の美しい絵画で、たくさんの映画のロケ地になっています。
そんな見ごたえのあるペインテッドホールを、写真・絵画の内容をご紹介します!
【Location】King William Walk, London SE10 9NN
旧王立海軍学校
グリニッジは、海軍王国であるイギリスの重要な拠点のひとつです。
「ペインテッドホール(Painted Hall)」は、そんなグリニッジにある旧王立海軍学校(Old Royal Naval College)の一部の建物です。
旧王立海軍学校は、世界遺産であるマリタイムグリニッジの建築のひとつ。1703年に英国を代表する建築家クリストファー・レンが設計し、バロック様式の建物が魅力的です。
元々は宮殿があったり、王立病院として使用されたりという歴史があり、現在はグリニッジ大学とトリニティー音楽院が建物を使用しているそう。
観光に行くと、どこかの建物内から楽器演奏の音色が聞こえ、敷地内は学生さんらしき人がちらほら。
建物内にある「ペインテッドホール(Painted Hall)」と「礼拝堂(Chapel)」が一般公開されており、観光名所となっています。
格式高い美しい建物で、たくさんの映画・ドラマのロケ地となっています。
「ハリー・ポッター」シリーズ、映画版「レ・ミゼラブル」、「パイレーツ・オブ・カリビアン」、「マイティ・ソー」など数々の有名作品に登場するようです。
「クイーンズハウス」を中央に、ドームがシンメトリーに配置されたデザインです。
当時、海上での生活は危険なもので、老後の蓄えが十分ではない船乗りがたくさんいたそうです。
そこで、グリニッジ王立病院としての役割を終える1869年まで、元船乗り・海軍兵たちに衣食住を提供する住居施設として使用されます。
居住しているほとんどの人はイギリス人でしたが、中にはカリブ海、北アメリカ、アフリカ、アジア出身の人もいたそうです。
1860年代になると年金をもらって外で暮らす人が増え、居住者の減少したことと、費用の高騰などの理由により1869年に閉鎖されました。
ペインテッドホール
壮麗なバロック様式の内装の「ペインテッドホール(Painted Hall)」
天井と壁の装飾は、イギリスの芸術家サー・ジェームズ・ソーンヒルによって考案・装飾されたものです。
ソーンヒルは、王立病院が建設され始め、かつ深刻な資金不足に陥っていた時期に、壮大なペインテッドホールの制作を依頼されました。
ペインテッド・ホールは、「英国民からの支持を得るため・寄付を獲得するため」の戦略的なキャンペーンのひとつだったのだそうです。
4万平方フィートに及ぶ広い構図に、だまし絵・明暗対比など様々な技法を駆使した絵画は、1707年から1726年までの19年もの歳月をかけてやっと完成しました。
ソーンヒルへの報酬は、壁に 1 平方ヤード (1 平方メートルより少し小さい) あたり£1、天井に 1 平方ヤードあたり£3 。
彼は19年間にわたるペインテッド・ホールの装飾で、£6,685(現在の£570,000、円換算で8,500万円ほど)の報酬を得たそうです。
年収450万円…芸術をお金に換算するのはどうかと思いますが、これだけの仕事をしたと考えると、私はちょっと安いかなと感じてしまいます(;’∀’)
ソーンヒルは、この功績から爵位を与えられ、セントポール大聖堂の壁画を担当することになります。
ペインテッドホールの壁画は、200人超の人物が登場し、政治的変化、科学・文化の成果、海軍の功績、商業事業などの背景が盛り込まれて描かれています。
イギリス人の愛国心をかきたてるようなストーリー性のある絵画となっています。